巳(子)考4 五穀豊穣の『季』の神。
季節の「季」は、現代でもなじみ深い漢字であるが、3400年前の甲骨文でも頻繁に登場する。それは人々に、五穀豊穣をもたらし、時にたたりをもひき起こす祭祀対象としての神「季」である。
子造形にまつわる文字のなかでも、極めて重要な意味をもつ。
西暦2025年は乙巳(きのと)年となる。
巳は「子」造形。
→前回ブログ参照→巳考1~3
禾を冠した他の例としては「人」造形の場合は「年」の文字となり「みのり」を意味する。
「女」造形の場合は「委」となるが、甲骨文では人名・地名としてしか確認できない。
祭祀対象としての「神」の役割をもつのは「禾」+「子」の文字である。このことからも「子」造形が特別な意味を持ち、年に一度の収穫において「季」に求め祷る記述から、最重要の神々の存在のひとつであった。
長い歴史の中で変わることなく伝承された。収穫にまつわる祈り。現代でも神道を神道たらしめている中核的な「伝承」は連綿とつながりをもっている。
神道体系とは「古代以来、稲作の王としての天皇を中核として伝承されてきている人びとの素朴な自然と生命への感謝の念と禊ぎ祓えの実践によるその信仰の意思表示の体系」である。神道入門─民俗伝承学から日本文化を読む 新谷尚紀
それは庶民の文化の中にも生きている。俳句のなかで「季語」は無くてはならないものとされるが、まさに神の語となろうか。現代の言葉には「四季折々」など、美しい文字も多い。甲骨に刻まれた「季」はなにより特別な自然神であった。
ここ数年は四季折々が狂い出し、夏冬時代となりつつある。春秋時代が懐かしいか。古代は「春」と「秋」の区分であった。人類が豐に暮らしていた時代に見習うべき点もあるだろう。
まとめ:子どもは神にもなる。それは禾(カ・いね)を冠した子。
『季』は神として刻まれた。
季…禾+子ども。禾+子で表現された「季」造形は、自然神として祈る対象(祭祀対象)として刻まれていた。祭祀原姿は穀物の神か。食としての禾祀りの重要性は変わらない。西周代に仮借か引伸義で「末の子」を指すように用いられた。のちに春夏秋冬の最後の月(3月季春)から季節の意味となった。甲骨文では神名、神季のたたりなど、季の祟を畏れる王などが刻まれている。
年は 受年の卜辞祝詞は数多くきざまれている。
「その年(みのり)を、受けるか受けざるか」と訓読する。豊作の吉凶を占う祭りは、大山阿夫利神社でも齊行され、わたしも神職としてご奉仕させていただいた。年始に米粒を箸でうつし豊作の吉凶をうらなう儀礼。祭祀参加はたいへん貴重な経験であり伝統の重みを感じさせる祀りである。
神の種。
収録「季の神」P20~22
<巳年考察1~3 back number>
巳考1 西暦2025年 巳年は子年。
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